みんなが知らない県道の下「鴨池川水路第10支線改築工事」
今回訪れたのは、1日に数万台の自動車が行き交う県道20号線、電停鴨池駅すぐそばの工事現場「鴨池川水路第10支線改築工事」です。
県道20号(鴨池駅〜騎射場駅付近)
南生建設が担当しているのは県道20号線の電停鴨池駅から騎射場駅方面に少し進んだあたり。地上部分は普通の街の風景ですよね。
今回はこの道の地下で行われている雨水管の改築工事を取材しました。
■鹿児島の下水道について
工事の様子をご紹介する前に少しだけ鹿児島の下水道について説明しておきます。
下水道には雨水と生活排水(汚水)の両方を一緒に流す「合流式下水道」と、雨水と汚水で分ける「分流式下水道」があり、鹿児島市では「分流式下水道」を採用しています(鹿児島市水道局:公共下水道より)。
鹿児島市水道局公共下水道(雨水)についてより
■工事概要
今回の工事は、敷設後数十年経ち老朽化した雨水管を長持ちさせるための改築工事になります。
こちらが工事前の雨水管の様子
この雨水管は鉄筋コンクリート製。たえず湿気にさらされているため鉄筋が爆裂し、コンクリートがダメージをうけている様子が見て取れます。このまま無策に放っておくと今後何かの拍子(重い車が通った際や、大きな地震などが起きた際)に天井が落ち、道路が陥没してしまうおそれがあります。交通量の多い県道ですから道路が陥没したら大きな事故に発展しかねません。そこで今回の改築工事となったわけです。
今回の改築工事に用いられた工法は「SPR工法」といい、簡単に書くと雨水管(既設管)を普段通り使用したまま内部にもうひとつ管(更生管)を作り、既設管を補強する工法になります。
日本SPR工法協会に詳しい解説映像がありますので、ご興味ある方はご覧ください。
■いざ雨水管へ!
前置きが長くなりましたが、それでは県道下にある雨水管をご紹介します!
こちらが入坑口。普段は蓋がついているマンホールです。人が出入りする時だけハシゴを下ろしていました。そして、作業者が坑内に取り残されることがないよう、今誰が坑内にいるのかわかるように名札もぶら下がっています。
ここが県道20号線の地下にある雨水管です
雨水管は高さ1.3m、横3mほどの大きさ。作業中は常に中腰の姿勢になります。
長靴でもどうにか入れる水量ですが、時には腰を落とすため作業をされる方々は胴長を着用していました。なお、ここは雨水しか入ってこないため、湿度はあるものの、嫌な匂いはなかったです。
私が訪れた時は、更生管の施工を終え、支えていた柱(支保工)を解体していました。
テキパキと柱を解体して、数十メートル離れた出入り口まで運び
それらをすべて手作業で外に出していきます
解体からこうして鉄柱を外に出すまで全部中腰での作業。中腰の姿勢は長時間になると腰に負担がくるのでこれで作業をするのはかなり大変。
私も撮影にあたり雨水管に1時間程度入っていたのですが、出る頃にはすっかり腰が痛くなってしまいました。その痛みは普段使っていない筋肉を使ったためで、徐々に慣れてくるようなのですが… それでも大変な作業には違いありません。
今回もまた「都市のインフラはこうして人知れず誰かの苦労によって支えられている」と、身をもって感じた取材でした。
こうした雨水管が機能しているからこそ、多少の雨ならばいつもと変わらず道を走ることができます。
また、こうした雨水管が都市を洪水から未然に防いでいるのです。
普段あまり意識することはないと思いますが、私達の生活が当たり前に成り立っている裏側にはこうしたインフラをメンテナンスしている人々がいます。これは鹿児島に限ったことではなく、全国の都市も同様です。
時には工事で車線が塞がれたり、迂回を余儀なくされることもあるかもしれません。しかし、そういう時こそ我々の「当たり前の生活」を頑張って支えている人たちがいることを思い出したいものです。
■この現場で作業されていたみなさま
一番右側が南生建設の道 博士さん。笑顔を絶やさぬ物腰の柔らかい方でした。
まさにインフラを整備するために生まれてきたようなお名前ですね。