指宿港離岸堤整備
2019年11月下旬。指宿港で行われている離岸堤整備工事の撮影に行った。
指宿港は昭和20年代前半まで綺麗な砂浜のある海岸だったが、昭和26年のルース台風によって海浜浸食が起き、その後護岸や突堤などを整備するも砂の流出は止まらず、現在砂浜がほとんど無くなっている。
砂浜がないため高波に対する防御機能も低く、近年台風による高潮・高波により近隣住民や商業施設に多数被害が出ている。
そこで、平成26年から国交省主導のもと、砂浜を再生させ高潮・高波に対する防護を目指し護岸や離岸堤の整備が行われている。
事業全体に関する詳しいことは↓をご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/common/001030860.pdf
南生建設では離岸堤の再整備事業の一部を請負い施工している。
離岸堤左端に船2隻見えるが、それが今回の現場だ。
手前の船がセルラーブロック(防潮堤の土台になるコンクリートの箱)を吊る「起重機船」。
奥の船がセルラーブロックを安定させるために石を投入する「ガット船」。
なお、その先にも離岸堤が見えるが、今事業ではその既存離岸堤を撤去し、再度しっかりとした離岸堤を作り砂浜を再生させるそうだ。
工事の様子を動画で撮影したので見て欲しい。
起重機船に載せてあるセルラーブロックを海に設置する作業だ。
大きな画面で見てもらうと、起重機船で吊ったセルラーブロックをウエットスーツを着た人(潜水士)が押したり、左右の船に乗った人たちがロープでセルラーブロックを引っ張り、ちょうどいい位置に置いていることがわかる。
起重機船を使って大まかな位置にセルラーブロックを吊るまでは5分とかからないのだが、その後、人力での調整に1時間近く要していた。もしここで位置がずれていると、波の抵抗を受けやすくなりそこから設備の破損などにつながってしまう。そのため測量をしながらとても慎重に作業をしているのだ。
しかし、これだけ大きな物を扱っているのに、細かい調整を行うのは人力というのは面白い。
この日は無風に近い絶好の工事日和だったが、風が吹いていたら調整はさらに難しくなるだろう。
あまりにも酷い天候ならその日はもちろん工事は中止になるだろうが、少々の風が吹いている程度なら工事は続行だ。それこそ働いている方たちの技術が試されるのだろう。
少し余談になってしまうが、現場の詰所には誰でも見れる位置に作業中止基準も貼られていた。
この規定値を超えた場合、工事は停止となる。
天候だけは人の力ではどうにもできない。
だからこそ「それ以外の部分で遅れが出ないよう、段取りには細心の注意を払っています」と現場監督さんがおっしゃっていたのは印象的だ。
余談ついでに…
詰所の看板には、事故が起きた際、どの病院を使うか(そのルートと所要時間など)、自然災害発生時の避難経路なども貼られていた。事故や災害は起きないにこしたことはない。
しかし、万が一何かトラブルが起きても速やかに対応できるよう事前に決めているのだ。
話がそれてしまったが、セルラーブロックを設置したらそれを安定させるため、ガット船が石を投入していく。
セルラーブロックの設置に比べるとスピーディーに石を投入していた。
国交省の事業スケジュールを見るに、指宿港の全体工事が終わるのは令和5年度。
砂浜が再生するのはさらに時間がかかるのだろうが、今回この工事を撮影したことで、砂浜が復活した指宿港もいつか見てみたい。
今後、指宿を訪れる際は、この港がどのように変化していくのか進捗を確認したいと思う。
現場位置